T2K実験グループが電子ニュートリノ出現現象の新しい結果を発表し、2011年7月に公表した結果を裏付け

6月 5, 2012

京都でのニュートリノ国際会議2012において、T2K実験グループは、ミューニュートリノが振動して電子ニュートリノが出現する現象に関する新しい結果を発表しました。これは、以前2011年7月にPhysical Review Letters誌に公表した、2.5σの統計的有意性でθ13がゼロでないことを初めて実験的に示唆した結果を裏付けたものです。

2012年5月までに収集された2.56×1020 POTのデータに基づいて、10個の“電子ニュートリノ出現”の候補事象が、T2K実験の後置検出器であるスーパーカミオカンデで観測されました。この観測により、前回の結果はさらに確かなものになりました。バックグラウンドの統計的揺らぎにより10個以上の事象が得られる確率(p値)は、0.08%の極めて小さな値になり、これは3.2σの統計的有意性に対応します。

このデータの解析は3つの異なる方法で行われ、全て矛盾のない結果を得ました。フィットされたsin2(2θ13)の中心値は、δ=0, Δm223=2.4×10-3 eV2, θ23=π/4で正常階層を仮定して 0.104+0.060-0.045 を得ました。

原子炉実験から得られるθ13に関する最近の精密測定の結果は、今回のT2K実験の結果とよく合っています。原子炉実験は反電子ニュートリノの消失事象に基づいていますが、T2K実験の結果は、ミューニュートリノビーム中での電子ニュートリノ出現現象を示しており、自然界に内在している可能性のあるCP非保存効果の検出に感度があります。

θ13に関するこれら2つの全く別の測定に矛盾がないことは、根本的な物理に対する我々の理解が正しいことを証明しており、未だ解明されていないニュートリノ質量の階層問題を解くためのユニークな機会を与えてくれます。それはまた(ニュートリノと反ニュートリノとで異なる振動を引き起こす)CP非保存探索の扉を開き、さらには、宇宙で物質が反物質より優勢になっていることの背後に潜む物理を探る鍵になる可能性もあります。