2012年夏までにT2K実験で得られた全データを用いて,電子ニュートリノ出現現象の結果を更新

10月 23, 2012

T2K実験グループは,オーストラリア・メルボルンで開かれた2012年高エネルギー物理学国際会議(ICHEP2012)において,ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動現象に関する最新結果を発表しました。この振動は,量子物理学によりニュートリノ質量がゼロでない場合に起こることが予言されています。今回の新しい結果は,2011年にPhysical Review Letters誌に発表した論文において,ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動の存在を実験的に初めて示唆したときの2倍以上のデータを用いて得られました。

メルボルンでT2K実験グループは,後置検出器であるスーパーカミオカンデにおいて,振動現象が無い場合には電子ニュートリノ事象が3.2個しか期待されないところに,実際には11個の電子ニュートリノ事象が見られたことを報告しました。この11事象が,ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動以外の過程の統計的揺らぎによって起こる確率は小さく,0.08%です。

3つの独立した解析がT2K実験グループで行われ,お互いに矛盾の無い結果を与えました。振動パラメータsin2(2θ13)は,その他のパラメータに標準値を仮定して0.094+0.053-0.040と測定されました。このパラメータは,T2K実験において6×108電子ボルトのエネルギーを持ったミューニュートリノが電子ニュートリノへ振動する割合を近似的に表しています。(1電子ボルトは,電子が1ボルトの電場で加速されるときに得られるエネルギーです。)

より詳細な結果は「For Physicists」のページにあります。また,メルボルンの会議でのプレゼンテーションはここを参照してください。