本日(2015年3月26日)15時25分、J-PARC加速器はT2K実験に対し、1×1021個の陽子をニュートリノ生成標的に照射するというマイルストーンを達成しました。(POT = protons on target) この素晴らしい成果を可能にしてくれたJ-PARCの諸関係者の方々に深く感謝いたします。
茨城県東海村のJ-PARCで生成された陽子がグラファイト製標的に照射されると、生成物の中に荷電パイ中間子が生成されます。これらのパイ中間子は、連続して並べられた3台のホーン電磁石を通り抜ける間に、正電荷のパイ中間子または負電荷のパイ中間子のどちらか一方が選択的にT2K実験の2つの検出器が置かれている方向に収束されます。正電荷のパイ中間子はすぐにミューニュートリノと反ミューオンに、負電荷のパイ中間子は反ミューニュートリノとミューオンに崩壊します。このことは、ホーン電磁石に流れる電流の向きを変えることで、T2K実験ではほぼミューニュートリノからなるビームか、またはほぼ反ミューニュートリノからなるビームのどちらかを選択できることを意味しています。(ミューオンや反ミューオン、および崩壊せずにビーム中に残留しているパイ中間子は標的から約100 m下流に設置されているグラファイト製ビームダンプで止められます。)
J-PARCからT2K実験に送られる標的照射陽子数は、T2K実験がどれだけのデータを取得したかを表しています。T2K実験は2010年1月に物理データの取得を開始し、2014年5月までニュートリノビームモードでデータ取得を続けてきました。その後は反ニュートリノビームモードでのデータ取得を続けています。1×1021個の数は、2010年1月から今日までT2K実験に送られた標的照射陽子数の両方のモードでの合計数を表しています。