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東日本大震災以降の復旧作業の状況

1月 14, 2012

東日本大震災以降、数か月にわたる復旧作業の後、我々は予定通り2011年12月24日から陽子ビームを加速器から取り出すことに成功し、電磁石やモニター類などビームライン構成要素の正常動作及び、ニュートリノ生成の再現性を確認しました。 しかし、12月22日の最終運転試験の途中、ホーン電磁石用電源のIGBTと呼ばれるスイッチングデバイスが故障しました。 したがって、12月のビーム運転はホーン電磁石を稼働させずに行われました。 我々は、電源を復旧させ、ホーン電磁石を稼働させた完全な状態での実験を3月から開始することを目指して、作業を続けています。 1月は、高出力運転のためのビーム調整と、前置検出器を用いた様々な系統的調査を行うために、ホーン電磁石を稼働させずにビームを取り出す予定です。

OPERA実験の報告(ニュートリノが光よりも速いという結果)に対するT2K実験グループの声明

10月 20, 2011

我々の実験の性能や精度などを考えると、現時点でT2K実験グループとしては、OPERA実験によるニュートリノの速度の測定を検証することに関して明確なことは言えません。 OPERA実験が得た結果を将来的に追試するために、我々のT2K実験の測定感度を向上させられるかどうか調査する予定です。しかし、性能を向上させてそのような測定をするには、しばらく時間が必要です。

T2K実験が電子ニュートリノ出現事象を初めて観測!

7月 13, 2011

T2K実験グループから最近発表された結果は、物理学における最大の未解決問題の1つ、すなわち、ビッグバンによって物質と反物質は同じ数だけ生み出されたはずであるにも関らず、なぜ現在の宇宙には物質しかないのか、という問いに答えることに対して一歩を踏み出す結果となりました。 今回のT2K実験の結果は、CP対称性の破れと呼ばれる物質/反物質の非対称性についての新たな研究へ道を開く可能性を持っています。1980年と2008年のノーベル物理学賞は、この現象の発見に対して贈られましたが、それは、原子核中の核子を構成する基本粒子であるクォークでの現象であって、ニュートリノでの現象ではありませんでした。初期宇宙におけるCP対称性の破れは、我々が観測できる今日の宇宙が物質優勢であって、反物質がほとんど無いということの理由である可能性があります。ニュートリノにおけるCP対称性の破れの研究は、この先何年もの間、主要な科学的探求の対象になるでしょう。 ニュートリノは、電荷を持たず、かつ知られている粒子の中で最も軽い素粒子です。(電子の質量の100万分の1よりも小さい。) ニュートリノには3つの種類、または“フレーバー”があり、それぞれ電子型、ミュー型、タウ型と呼ばれます。ニュートリノが運動するとき、それらはあるフレーバーから他のフレーバーへ振動することがあります。(より詳しくは、「ニュートリノについて」をご覧ください。) 2011年6月、T2K実験グループは、ミューニュートリノから電子ニュートリノへ変化または“振動”する現象を世界で初めて観測したことを発表しました。 日本で行われているT2K実験において、ミューニュートリノビームは東京から北西約100kmの茨城県東海村にあるJ-PARC(Japan Proton Accelerator Complex)の大強度陽子加速器を用いて生成されます。ニュートリノビームは東海村から295km離れた岐阜県飛騨市神岡町のスーパーカミオカンデ地下検出器に向けて発射されます。(より詳しくは、「T2K実験について」をご覧ください。) スーパーカミオカンデで測定されたミューニュートリノおよび電子ニュートリノのフラックス(流束)は、振動が無いと仮定した場合に期待されるフラックスと比較されます。T2K実験グループの研究者は、バックグラウンド事象数の期待値が1.5であるのに対し、6個の電子ニュートリノ事象を同定することが出来ました。この新しい結果は、ミューニュートリノビームからの“電子ニュートリノ出現現象”、すなわち、ミューニュートリノが電子ニュートリノに“振動”したことを世界で初めて測定したものです。 しかし、これは大変困難な測定で、それは以下の2つの理由によります。1つ目の理由は、振動の確率がミューニュートリノからタウニュートリノへの振動よりもずっと小さいことが挙げられます。2つ目の理由は、スーパーカミオカンデにおいてニュートリノビームからの電子ニュートリノと見間違える事象が生成される過程が非常に多くあることです。言い換えれば、J-PARCの大強度ビームを使ってさえ、ほんのわずかな数しか電子ニュートリノ出現事象が期待されないため、バックグラウンド事象を間違って同定してしまうことは、非常に大きな問題となります。 これまでの実験では、電子ニュートリノ出現確率の上限値しか報告されていませんでした。すなわち、期待されるバックグラウンドよりも統計的に有意な測定事象数の超過は認められませんでした。したがって今回のT2K実験の結果は、統計的に有意な出現の兆候を世界で初めて得ています。これらの結果は、Physical Review Letters誌で論文審査され公開されました。Physical Review Letters誌は、最も影響力のある物理学術誌の1つとして世界に広く認められています。 CP対称性の破れとその他のニュートリノ物理現象を理解するゴールに向けてさらにステップを歩んでいき、研究における重要で技術的な挑戦を乗り越えるためには、T2K実験のような大きな世界的共同研究が必要になっていくでしょう。これらのニュートリノ振動が起こっていることを検証し、我々の物理量の測定をさらに精密にするためにも、より多くのデータが必要です。 T2K実験はこれら必要なデータを今後数年間で得る予定です。当分の間は、日本の電力システムが2011年3月に起こった地震と津波に伴う発電能力不足から回復するまで加速器は停止しますが、2012年の早いうちに運転を再開できると見込んでいます。今回得られた最初の結果が今後検証された後は、T2K実験は反ミューニュートリノビームでデータを取り、反ニュートリノ振動をニュートリノ振動と比べることで、物質/反物質の非対称の問題を詳しく研究していく予定です。 このウェブサイトの他のページも参照してください。: (T2K実験について, ニュートリノについて) 関連リンク: T2K実験のプレスリリース(日本, アメリカ) ロサンゼルスタイムズの記事:ビッグバンの理解に向けて一歩となるニュートリノの観測 ネイチャー誌ブログ:ニュートリノ実験が物質・反物質の対称性を検証する可能性 ビューポイント:新たなニュートリノ振動,Stephen J. Parke, Physics 4, 57 (2011) – 2011年7月18日刊行 学術論文(Physical Review Letters誌に受理済):加速器によって生成されたオフアクシス・ミューニュートリノビームからの電子ニュートリノ出現の兆候