ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動現象を発見に導いた貢献に対し、小林隆氏と中家剛氏に2014年の仁科記念賞が授賞されました。小林隆 高エネルギー加速器研究機構(KEK)教授は、T2K実験の実験代表者を務めており、中家剛 京都大学教授は、2009年から2013年までT2K実験の物理解析総責任者を務めました。授賞式は2014年12月5日、東京會舘で行われました。
ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動現象の発見は、2013年7月にT2K実験グループによって発表されました。T2K実験では、茨城県東海村にある実験施設でミューニュートリノビームが生成され、そこから295km離れた岐阜県飛騨市のスーパーカミオカンデ検出器まで送られます。この発表は、スーパーカミオカンデにおいて28個の電子ニュートリノ事象の候補が見つかったことを受けて行われました。このことは、ニュートリノの検出地点において、その生成地点でのフレーバーとは異なる特定のフレーバーを持つニュートリノが明らかに出現する現象が疑いの余地なく観測されたために、極めて重要な物理学上の発見となりました。この発見はまた、レプトンセクターでのCP対称性の破れを探索することが可能であることを明らかにしました。レプトンセクターでのCP対称性の破れは、自然科学における最も深遠な謎の1つである、宇宙での物質と反物質が非対称に存在することを理解するための決定的な鍵となる可能性があります。
仁科記念賞は、毎年、原子物理学や原子核・素粒子物理学の分野において重要な成果をもたらした若手研究者に送られます。この賞は、ウラン237の発見や、光子と自由電子の散乱断面積を与えるクライン・仁科の公式を著した業績を持つ優れた日本人物理学者である仁科芳雄博士(1890-1951)を記念して作られました。
今回の仁科記念賞受賞、本当におめでとうございます。