スウェーデン王立科学アカデミーは、T2K実験コラボレーションメンバーの梶田隆章教授に2015年のノーベル物理学賞を授与しました。梶田教授は東京大学宇宙線研究所の所長を務めており、「ニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動の発見」に対してアーサー・マクドナルド教授(クイーンズ大学)と賞を分け合いました。
梶田教授のノーベル賞受賞の成果はスーパーカミオカンデで得られました。スーパーカミオカンデは、大気ニュートリノ振動を発見した巨大な水チェレンコフ地下検出器で、T2K実験の後置検出器としての役割も果たしています。宇宙線が地球の大気中で反応を起こすと電子型とミュー型の両方のニュートリノが生成されますが、スーパーカミオカンデはそれらを高い精度で判別することができます。上方から飛来する電子型ニュートリノの割合は、下方からやってくる電子型ニュートリノの割合と同じだったのですが、梶田教授と共同研究者たちは、下方から、つまり地球を通り抜けて長い距離をやって来るミュー型ニュートリノは、上方から飛来するミュー型ニュートリノよりもずっと少ないことを発見しました。今では我々は、ミュー型ニュートリノがタウ型ニュートリノに変化し、そのニュートリノのエネルギーが重いタウ粒子を生成するには低すぎるために、それらは反応を起こさないのだということを知っています。この現象はニュートリノ消失現象と呼ばれ、梶田教授とスーパーカミオカンデによるその発見は素粒子物理学の新たな領域の幕開けになったと考えられています。そして、T2K実験では今まさにその領域の研究を続けているのです。
梶田先生、おめでとうございます。