ニュートリノとは?

ニュートリノは原子よりも小さな粒子で、我々が知る限り、陽子や中性子のような内部構造を持った複雑な粒子ではなく、それ以上小さい要素に分けることのできない素粒子です。

現在我々が知っている最良の素粒子理論である素粒子標準模型には、2つの基本的なタイプの物質粒子が含まれています。1つはハドロンと呼ばれるもので、原子核内で核子を結びつけている強い力を感じる粒子です。2つ目はレプトンと呼ばれるもので、こちらは強い力を感じません。最もよく知られているレプトンは電子ですが、負の電荷を持っているので、電磁力を使って検出したり、その運動を変えたりすることができます。電子は、日常的に目にする物質のほとんどの性質に重要な役割を果たしており、異なる元素が化学的にどう反応するのかを決定づけています。また電子の流れは電流を作り、それは現代の科学技術には無くてはならないものとなっています。素粒子標準模型では、電子の他にミューオン(μ)およびタウ(τ)とよばれるもう2種類の荷電レプトンが存在します。これらは共に電子より重く不安定で、1秒よりもずっと短い時間で崩壊します。従って、日常生活にはほとんど影響を与えませんが、それらは粒子加速器で作って検出することができるので、素粒子物理学者にとってはよく知られた存在となっています。

ニュートリノは電荷を持っていないレプトンで、このことはニュートリノは弱い力と重力しか感じないことを意味しています。弱い力とは、その名の通りほんの短い距離(10-18 m, 原子核の直径よりもずっと小さい)しか力が及びません。また、重力は原子のスケールでは信じられないほど弱く、例えば何かを持ちあげるとき、筋肉の中ではたらいた電磁力は地球全体が及ぼす重力に簡単に打ち勝ちます。従って、弱い力と重力しか感じないニュートリノは、他の粒子を相互作用を通して“見る”ことが極めて困難です。これはニュートリノの検出を非常に難しくしており、典型的なニュートリノは1光年もの厚さの鉛を相互作用せずに通り抜けます。ニュートリノはまた非常に小さな質量を持ち、その値は、水素原子の千分の一よりも軽い電子のそのまた百万分の一よりも小さいと物理学者は考えています。ニュートリノはそれゆえに非常に捕まえにくい粒子で、最初にその存在の必要性が理論的に示唆されてから、実際に実験的に観測されるまでに、25年もの年月がかかりました。