反物質が消えた謎にニュートリノで迫る T2K 実験、飛躍的に測定精度を高める新しい段階へ
T2K 実験国際共同研究グループは、増強されたニュートリノビームと新型ニュートリノ検出器を用いた実験データ取得を 2023 年 12 月より開始しました。これにさきだち、 KEK/J-PARC センターはメインリング加速器およびニュートリノビームラインの出力を増強する改修を行い、より多くの陽子をニュートリノ生成施設に供給することができるようになりました。 2023 年 11月から陽子ビームを用いた調整運転をはじめ、増強前と比較して約 40%増の過去最高ビーム強度 (約 710 キロワット) での定常的なニュートリノビーム生成を達成しました。また 12 月 25日にはメインリング加速器の当初の目標性能を超える 760 キロワットでの連続運転にも成功しました。T2K 実験は、ニュートリノ生成装置の増強を行い、生成装置の心臓部であるパルス電磁石 (電磁ホーン)の印加電流を従来の 25 万アンペアから 32 万アンペアにしました。これにより陽子ビームと標的との反応で生成されたニュートリノの素となる荷電粒子の収束効率が向上し、ニュートリノビームの強度を 10%程度増加することができました。また、ニュートリノ反応を従来よりさらに高精細に測定できる新型検出器群を設置しました。新しく設置した検出器は、その内部で起きたニュートリノ反応の反応点周りの飛跡を検出する SuperFGD、従来の検出器がカバーしていなかった大角度方向に放出された粒子の運動量測定などを行う High-AngleTPC、粒子の飛来方向同定や粒子識別などを行う Time-of-Flight からなります。これらの新しい装置により従来の検出器では捉らえることが出来なかった反応点周りの飛跡や大角度方向に放出された反応生成粒子を観測できるようになり、T2K 実験は飛躍的に精度を高めた測定が可能になる新たな段階に移行しました。ビーム運転開始後の新型検出器の調整運転で、ニュートリノ事象候補の観測に成功しました。T2K 実験は 2020 年、世界で初めてニュートリノと反ニュートリノの振る舞いの違いの大きさを示す物理量 (CP 位相角) に大きな制限を与えました。これらの増強で今後も世界をリードする実験によりその検証を進めることで、ニュートリノの性質の理解がさらに進み、宇宙から反物質が消えた謎の解明に繋がると期待されます。 詳しくは プレスリリース をご参照ください。
ジュン教授が2022年アメリカ物理学会ユリウス・エドガー・リリエンフェルト賞を受賞しました
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、物理天文学科長で特別教授のチャンキー・ジュン教授が2022年アメリカ物理学会ユリウス・エドガー・リリエンフェルト賞を受賞しました。T2K実験の元共同スポークスマンでもあるジュン教授のニュートリノ実験物理学における多大な貢献とスポーツ物理学に対する教育的な貢献が評価されました。ジュン教授は1990年代にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校にニュートリノグループを立ち上げ、それ以来スーパーカミオカンデ、K2K、T2Kを含むのニュートリノ実験で重要な役割を果たして来ました。 写真: ライダー・ハーン, フェルミ国立加速器研究所
ボロネッシ博士が欧州物理学会エミー・ネイター賞を受賞
サラ・ボロネッシ博士が「セルンCMS実験の性能を向上させたデータ解析手法の開発によってヒッグス粒子の発見及び初のスピンとパリティーの測定に貢献」したことにより欧州物理学会2021年夏季エミー・ネイター特別賞をしました。ボロネッシ博士の所属はフランス原子力代替エネルギー庁(CEA)宇宙基礎理論研究所(IRFU)です。 ボロネッシ博士はT2K実験に2013年から参加していて2020年にT2K実験が初めてレプトンのCP対称性の破れの兆候を掴んだことにも貢献しています。ボロネッシ博士は現在T2K実験の解析グループを総括するコーディネーターとして活躍しています。
東北大学の市川教授がT2K実験のスポークスパーソンに再選出されました
東北大学の市川教授がT2K実験のスポークスパーソンの二期目に再選されました。
ジュネーブ大学のサンチェス教授がT2K実験の国際共同スポークスパーソンに再選出されました
ジュネーブ大学(スイス)のサンチェス教授がT2K実験の国際共同スポークスパーソンの二期目に再選出されました。